【2026年からの新常識】購買・調達・物流担当者が知るべきScope3排出量削減ロードマップとサプライチェーン戦略

購買・調達・物流担当者必見。Scope3排出量削減ロードマップとSCM戦略で持続可能なサプライチェーンを構築し、コスト削減と企業価値向上を実現する具体的な方法論を提示。競合に差をつける戦略的アプローチを解説。

この記事の結論:2026年度から本格化するScope3排出量開示義務化とGX-ETS義務化に備え、サプライチェーン全体の脱炭素化に向けた早急なデータ収集・取引先連携が不可欠です。

  • 2026年度からのデータ収集・蓄積を最速で開始
  • 一次データ取得に向けたサプライヤー連携を強化
  • GX-ETSやSBTi基準に対応した削減ロードマップ策定

日本の中堅・大手企業の購買・調達・物流ご担当者の皆様、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量、特に「Scope3排出量」への対応は、単なる環境活動ではなく、企業の存続と競争力を左右する経営課題へとその位置付けを大きく変えています。2026年度(2026年4月1日開始事業年度)は、この変化に対応するための準備を本格化させる“ラストチャンスの年”となります。本記事では、迫りくる開示義務化と排出量取引制度の本格稼働を見据え、皆様が今すぐ取り組むべきScope3排出量算定・削減ロードマップとサプライチェーン戦略について解説します。

2026年、なぜScope3排出量への対応が喫緊の課題なのか?

皆様の企業にとって、Scope3排出量(サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量)は、自社が直接排出するScope1・2排出量をはるかに上回る割合を占めている可能性があります。例えば、NECグループでは温室効果ガス排出量の実に96%がScope3に該当するとされています。このような状況の中、日本企業を取り巻く環境は、2026年を境に大きく変化します。

まず、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が国際基準(ISSB)に整合した開示基準を確定し、**2027年3月期決算からプライム市場上場企業に対し、有価証券報告書でのScope3開示が段階的に義務化**されます。具体的には、2027年3月期には時価総額3兆円以上の企業が、2028年3月期には1兆円以上の企業が対象となり、その算定にはGHGプロトコルに準拠した厳格な方法が求められます。これは、遅くとも2026年度からのデータ収集・蓄積を意味します。

さらに、国際的な気候変動イニシアティブであるSBTi(Science Based Targets initiative)も、ネットゼロ基準を改定し、高所得国の大・中規模企業(Category A企業)に対して、短期目標でScope3の67%以上、長期目標で90%以上のカバー率を求めるなど、より高水準な削減目標設定を促しています。

加えて、2026年度からは日本の排出量取引制度(GX-ETS)の第二フェーズが本格的に始動し、過去3年間のCO2直接排出量が年間10万トンを超える約300〜400社の国内企業に対し、排出枠の償却が法的に義務付けられます(出典:e-dash株式会社「排出量取引制度は2026年に何が変わる?」)。これは、サプライヤー選定や調達方針にも影響を及ぼし、企業はサプライヤーの排出削減努力を評価軸に加える必要が生じるでしょう。対応の遅れは、市場価値の低下に直結しかねないリスクを孕んでいます。

サプライチェーン全体の脱炭素化を加速させる「一次データ」の重要性

Scope3排出量の算定は基本的に「活動量 × 排出原単位」で行われます。しかし、精度の高い算定と信頼性のある削減を目指すためには、取引先から取得する「一次データ」(実測値)が不可欠です。環境省のガイドラインでも、一次データによる算定が推奨されており、二次データ(業界平均値など)に依存するだけでは、削減努力が適切に評価されないリスクがあります。

購買・調達・物流ご担当者の皆様は、サプライチェーンの最前線で取引先と密接に関わる立場として、この一次データ取得において非常に重要な役割を担います。単に排出量情報の提供を依頼するだけでなく、サプライヤーへの具体的な削減協力の依頼、さらには中小企業への算定支援や研修提供といった能動的な働きかけが鍵となります。

Scope3算定結果は、もはや「報告義務」の対象ではなく、「経営判断と競争力の指標」へと位置付けが変化しています。ESG投資家からの評価や顧客・サプライヤーからの要請が急速に高まる中、精度の高いScope3データは、企業の持続可能性経営における前提条件であり、企業価値を左右する要因となっているのです。

今すぐ始める!Scope3削減ロードマップと具体的なアクションプラン

2027年3月期の開示義務化に向けて、日本企業は遅くとも2026年度からのデータ収集・蓄積を最速で開始する必要があります。サプライチェーン排出量は自社の活動範囲を超え、多岐にわたる活動データを集計するため、事前の準備が欠かせません

アクションプラン:

  1. **データ収集基盤の構築(~2025年末):**

    自社内のScope1・2排出量を正確に把握するとともに、Scope3のカテゴリ特定と、必要な活動データ(輸送距離、原材料調達量、廃棄物量など)の洗い出しを行います。サプライヤーへのアンケート調査や算定ツールの導入検討もこの段階で進めます。

  2. **サプライヤー連携の強化と一次データ取得への移行(2026年~):**

    サプライヤーに対し、GHG排出量の情報提供を要請し、可能な限り一次データ(実測値)の取得を目指します。サプライヤーが算定体制を構築できるよう、ガイダンス提供や算定ツール紹介、必要に応じて研修機会の提供も検討しましょう。購買契約に排出量情報開示条項を盛り込むことも有効です。

  3. **削減目標の設定とロードマップ策定(2026年~2028年):**

    収集したデータに基づき、削減目標を設定します。国際的な信頼性を高めるためには、SBTiの認定取得が強力なアピールとなります。例えば、住友重機械工業株式会社は、2030年までにScope3カテゴリ11(販売した製品の使用)のCO2排出量を2019年度比30%削減する目標をSBTiに認証されています。目標達成に向けた具体的な削減ロードマップを策定し、サプライヤーと共有して協働を促進します。

  4. **GX-ETSへの対応と継続的な改善:**

    自社がGX-ETSの対象となる場合は、排出量削減計画の提出や排出枠の償却義務に対応します。サプライヤーがGX-ETSの対象となる場合も、その影響を考慮した調達戦略が必要です。定期的に排出量をモニタリングし、削減策の効果を評価しながら、継続的な改善サイクルを回しましょう

中小企業においても、GXロードマップのフェーズ0(~2025年末)でGHG排出量の可視化と基盤構築、フェーズ1(2026~2028年)でSBT設定やGX-ETSへの対応を進めることが求められています。大企業は、サプライチェーンパートナーである中小企業の脱炭素化を積極的に支援し、共に成長する「共創」の姿勢が求められます。

よくある質問(FAQ)

Q. Scope3排出量とは何ですか?
A. Scope3排出量とは、自社事業活動に関わるサプライチェーン全体から発生する間接的な温室効果ガス排出量のことで、Scope1・2以外のすべての排出量を指します。
Q. なぜ今、Scope3排出量に取り組む必要があるのですか?
A. 2027年3月期からプライム市場上場企業に開示が義務化され、ESG投資家や顧客からの要請も高まっています。対応の遅れは企業価値低下リスクに直結します。
Q. 中小企業もScope3排出量への対応は必要ですか?
A. 大企業のサプライヤーとして、排出量情報の提供や削減協力が求められるため、自社のGHG排出量の可視化と削減への取り組みは不可欠です。

まとめ

2026年は重要なターニングポイントです。購買・調達・物流ご担当者の皆様は、開示義務化とGX-ETS義務化の波を乗りこなし、企業の持続可能な成長を実現するために、サプライチェーン全体の脱炭素化を強力に推進していく必要があります。2026年度からのデータ収集開始、サプライヤーとの連携強化は待ったなしの状況です。本記事でご紹介したアクションプランを参考に、今すぐ具体的なロードマップを策定し、実行に移していきましょう。サプライチェーンの強靭化と企業価値向上は、脱炭素化の先にあります。

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